わたしを支えてくれた音楽3 マーラー交響曲9番 第4楽章

これもずるをして全曲は聞かなかったのだが、手術後少し長いものでも集中できるようになったときにまっさきに聞いた。同じような旋律がくりかえされ、それがわたしには同じような木々が茂る森に分け入るような印象で、好ましかった。「弦だけによる演奏」と思い込んでいたが、今聞きなおしてみると管楽器がかなりのボリュームで響くこともあることに気づく(弦もかなりのボリュームで響いていることがあるのだが、入院中はそのことにも気づかず、『とても静かな音楽』と感じていた)。

クリムトが描く少し透明で不自然な感じの森に静かに分け入るようなイメージ、そしてわたし自身は森から出ることはなく、静かに朽ちて森の一部になっていくようなイメージ。そこには静かな安らぎだけがあり、おそれは何もない。来世は森の奥のきのことかでもいいななどと無責任なことを、脳をいじられたあとの病室で感じていた。

先日(術後3ヵ月経過)これをくりかえし聞きながら、友人に勧められた重松清の『十字架』という小説を読んでいたら、音楽と小説とが深いところで共鳴してしまい、もどってくることができないほどものすごく深く集中してしまい、気がついたら外が暗くなっていた。

この曲もわたしの手元にあるCDはシノーポリのもの。
(2010年6月28日)
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