映画『人民公厠』 フルーツ・チャン監督
日本では公開されたのだろうか。例によって中国語か英語か、どちらの字幕を選んでも苦渋の結果しか残らない香港版DVDで鑑賞。見てからもう一年ほど経つだろうか。どう書いていいのかもわからないほどの失敗作。
世界はトイレで通底しているというアイデアはおもしろかった。しかしそこから世界に出てしまったところにフルーツ・チャンの誤りがあった。彼は香港の日常を描くことにおいてその手腕を遺憾なく発揮する。本作でベースキャンプとなるのは中国なのだが、中国だけにとどまっていたならまだ何とかなったのではないかと思う。
インドのベナレス河畔での火葬の撮影などは、その迫力に気圧されてしまった観光客の手によるもののように見えてしまう。外国のシーンで唯一印象に残ったのは、香港生まれのインド系の青年がインドを旅しながら、「ぼくらはどこの国の人間に見えるんだろう」と言い交わすところ。二人が交わす言葉は広東語。外見はインドの風景にとけこんでいるのだが、言葉は異質なものだし、彼らのアイデンティティは香港にしかないはずだ。一瞬の言葉なのだが不思議な感覚を残した。
同じ監督の『メイド・イン・ホンコン』で強烈な印象を刻んだサム・リーも何のために起用されたのやら。『花火降る夏』でこれも強烈な印象を残した女の子も何の役だかわからない。中途半端。この中途半端の原因はすべてフルーツ・チャンが外に出てしまったことに起因する（としかわたしには考えられない）。公衆便所で世界がつながっているというアイデアはよかった。もっと深く掘り下げることが可能なテーマだと思う。残念だ、フルーツ・チャン。
2001年か2002年？ 香港映画
監督 フルーツ・チャン
（2005年6月3日）
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