映画 『餃子』 フルーツ・チャン監督
前作でわたしを落胆させたフルーツ・チャンがホラー映画を作ったという。香港の友人がビデオCDを送ってくれた。たいへん廉価であることの代償として画質が非常に悪かったビデオCDなのだが、最近は何かが進歩したのだろうか、画質はあまり気にならなかった。
それよりも何よりも気になったのは、フルーツ・チャンがホラーを撮ったということだった。前作の失敗でもうだれもまともな仕事をくれなくなってしまったのか、とも心配した。
たぶんそういうことではなかった。フルーツ・チャンは香港にカメラを据え、生き生きとホラー映画を撮っていた。ホラー映画といっても、突然ゾンビが飛び出してきたり、チェーン・ソーで手首が吹っ飛ぶという類のものではない。いつものフルーツ・チャンらしく香港の（それも香港島サイドではなく九龍サイドの）日常生活にぴったりと寄り添い、いかにもありそうな、あるいはないこともなさそうな映画に仕上げた。こみ上げてくるのは恐怖感というよりも嫌悪感。
撮影のクリストファー・ドイルがうまい。餃子を作る女性の狭いアパートの一室を、遠くから近くから、うまく撮影した。うまく、というのはきれいにということではない。香港のアパートの息苦しくごみごみした感じや少し疲れた感じがとてもよく伝わってくる。「きれい」と表現してもいいほど、よく伝わってくる。
香港が中国に回帰したころに力作を作りつづけたフルーツ・チャンだが、回帰後も今のところ大きな変化が見られない中、どのような方向性を見出して映画を撮ってくれるのか、心配半分、期待半分で待ちつづけるとしよう。
本来この作品は日本・韓国・香港の監督によるオムニバスの一編として作られたものらしく、そちらも見たわが家族によれば、終わり方が微妙に違うとのこと。オムニバスは新聞の広告に出ているから、そろそろ公開されるのだろう。
2004年？
香港映画
監督 フルーツ・チャン
（2005年6月3日）
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