聖書の黙想(下館聖公教会)
教会は降臨節という季節を迎えている。今日は4つあるろうそくの2本に火が点された。これが全部つくとクリスマスということになる。もうすぐクリスマスというしらせのろうそくが点されるこのときに今日の福音書の個所を読むことの意味を考えてみたい。
今日の福音書は時代がいつのことだったのかということを、この当時のやり方で記している。今であれば「2006年のことでした」と一言ですむところなのだが、この当時はまだそのような数え方がなかったため、皇帝で言ったらだれが治めていたときかというような書き方をしている。
そのときに何が起こったのかということが大切なのだが、「神の言葉が荒れ野でザカリアの子ヨハネに降った」とある。そしてそのヨハネがヨルダン川の近くで、「罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた」と書いてある。水で洗うことによって罪が清められる、罪を反省し罪とは無縁の状態で神を待とうとヨハネは人々に告げた。そして言葉通りに洗礼を実行したために「洗礼者ヨハネ」と呼ばれることになる人が活動をはじめた、ということが書いてある。そしてそのできごとは旧約聖書のイザヤ書に書かれているとおりのことだったと最後に記されている。
今日はこのイザヤ書の言葉を考えてみたい。このように書いてある。「荒れ野で叫ぶ者の声がする」。その声が何を語るのかと言えば、次のような言葉が続く。「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ。谷はすべて埋められ、山と丘はみな低くされる。曲がった道はまっすぐに、でこぼこの道は平らになり、人は皆、神の救いを仰ぎ見る」。預言者の書物は時として詩のような言葉で書かれているからわかりにくいところ。
まず「荒れ野で叫ぶ者の声がする」とある。荒れ野という言葉は「神の言葉がヨハネに降った」場所でもあるから、ヨハネと関係がありそうな気がする。ヨハネが何をしたのかということをイザヤ書の言葉で考えたらこうなりますよ、という内容がそのあとに記されている。主の道、すなわち神が通る道をまっすぐに整えておきなさい、準備をしておきなさいということ。ヨハネが何のために現れたかといえば、それは曲がった道をまっすぐにするため。左右に曲がっていればそれをまっすぐにする。上下にでこぼこしているところがあれば、それもまっすぐにする。谷は埋める、山は削る。そのようにして道をまっすぐに通す。
なぜかと言えば、もうすぐ神が来られるから。神が歩む道を通りにくいものではなく、通りやすいものとして整えなさい。洗礼者ヨハネに則して言えば、この人は罪のゆるしを得させる洗礼を人々に施していた。みんなそれぞれ今までに犯した罪があるはず。それを反省して、水で洗い流して、いわば真っ白になった状態で神を待ちなさい。それがヨハネの勧めの内容だった。
真っ白という状態と、イザヤ書が語る「まっすぐ」ということが結びつく。あなたがたの歩んできた道がまっすぐでないのであれば、それをまっすぐに整えなさい。まっすぐ神の方を向いて、神を迎えなさい。あなたがたの心の中にでこぼこがあるのであれば、それを埋めなさい。
「まっすぐ」ということについてさらに考えれば、わたしたちのあいだにもでこぼこがありはしないだろうか。先ほど日曜学校の子たちにはテストの点数の話をしたのだが、わたしたちは同じテストを受けても、いろいろな点数を取る。点数のことだけに限らず、わたしたちのあいだにはちがいがある。個性という意味では違いがあるのがあたりまえ。その違いは尊重されなければならない。しかし社会の中で生きていくことをむずかしくするような違いもある。
たとえばわたしたちがどれほどのお金を持っているか、ということについての違い。健康であるか病を抱えているかという違い。病を抱えていてもそれを周囲から支えてもらうことができるのであればいい。しかしだれからも支えてもらうことができないとき、病は生きていくことを妨げるものとなる。そしてわたしたちのあいだには、でこぼこが生まれることになる。神を迎えるために、あなたがたのあいだにあるでこぼこも平らにしなさい。生きることがむずかしいという人を放置しておくのではなく、みんなでかかわりながら、少しでも生きることの困難を軽くしていく、そのような社会を作りなさい。そしてそこに神を迎えなさい。
だれかのことを見て見ぬふりをするのであれば、それもヨハネが語る「罪」ということになる。それを反省しなさい。反省するということは「見て見ぬふり」はもうできなくなるということ。それをしないということ。反省をするのであればそれはゆるされる。だからどこにでこぼこがあるのかに気づきなさい。そしてそれを見極めなさい。考えなさい。そしてかかわりなさい。
ひとりひとりのこころの中を平らにする。それだけにとどまらず、みんなのあいだにあるでこぼこも平らにする。そして神を迎えなさい。
C年にはルカによる福音書を読む。ルカによる福音書は富の用い方を問題とする。富をひとり占めするのか、それとも分かち合うのか。分かち合う方向に進むことがでこぼこを平らにすることにつながる。
クリスマスを前にしたこの時期、曲がっているものをまっすぐにする、でこぼこがあればそれを埋める。それがわたしたちのあいだで具体的にどのようなことを指すのか、そのことを考えながら過ごしたい。
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