フランシス秋葉晴彦
愛隣幼稚園創立100周年・宇都宮聖ヨハネ教会聖堂聖別80周年おめでとうございます。わたしがかかわることができたのは一年あまりに過ぎないのですが、わずかのかかわりであっても100年あるいは80年という長い歴史の一部に組み込まれることの不思議を思います。互いに顔もわからず会ったこともない実に多くの人たちの、目に見えない、一日一日の努力が結晶し、顧みれば長い歴史が刻まれることになる、そんなことが起こりました。そこで発揮されるひとりの人間の力はあまりに小さく、しかしそれが「みんなの力」として束ね合わせられるときに、思いもかけないことが起こってきたのだと思います。わたしたちの成長を待ち、わたしたちをゆっくりと育んでくださる神の御手が、ゆたかに差し伸べられたことも忘れてはならないでしょう。
わたしにとって宇都宮は神学校卒業後初の任地でしたので、知らない土地で経験のない実務に就くという、よく言えばフレッシュ、悪く言えば何もわからない状態でした。そのようなわたしを教会のみなさんも幼稚園のみなさんも、あたたかく見守ってくださったことを感じます。
宇都宮の冬の寒さを知らず、「水道の水抜きをするように」と幼稚園の先生方から念を押されていたのにそれを忘れ、ある日水道管が凍り水が出なくなり、お叱りを受けたこともありました。執事按手式の前日に、ユニフォームの一部であるラウンドカラーを、試しにつけてみたのはいいけれどはずせなくなり、部屋で人知れず七転八倒したこともありました。次の任地に向かうため別れのあいさつにうかがったときに、「歳をとると別れがつらくなるんだよ」と、斎藤千秋ご夫妻が涙を流してくださった姿もなつかしく思い出します。
今のわたしの原型が形づくられたといっても過言ではない宇都宮での日々に、深く感謝しています。
（2013年10月19日）