生川又平さんを偲ぶ
秋葉晴彦
生川さんにはじめてお会いしたのは、この夏のことでした。高崎の病院に入院されているとうかがい、お見舞いにおじゃましました。そのときの生川さんの印象は、『だいじょうぶかな』とかなり心配になるほど重篤なものでした。顔面は蒼白、呼吸は苦しげで、水も吸い飲みから気をつけながら少しずつ摂取するしかないというご様子を拝見しながら、『もう何日ももたないかもしれない』と心の中で考えたことを思い出します。
その後退院された生川さんに穏和の園でお会いして、驚きました。全身の筋肉がすべてそぎ落とされたような印象は変わらなかったのですが、目に光が宿っていました。そしてやさしいけれどしっかりとした口調で、今はベッドから出ることはかなわないけれど、室内を歩くことができるようになることをとりあえずの目標とすることを医者とも相談した、とわたしに語られました。生きるか死ぬかの状況を脱したばかりなのだから、さぞやお疲れであろうなどと考えているわたしのはるか先を見据え、そこに向かって歩もうとする意欲がはっきりと見えました。残念ながらその目標を達することはできませんでしたが、生川さんが貫いてきた生き方を見せていただいた、とそのときわたしは深く感じました。
「教会は少しずつ変わりはじめています」とご報告したときの、うれしそうな笑顔も忘れることができません。骨の中に目があり、その上を皮膚がおおっているだけと思われるようなお顔でしたが、その笑顔は人を励ます力をもっていました。人はその命が尽きるそのときまで、人としてだれかを励まし、また自らに課題を課しつつ生きることができるのだということを、わたしは生川さんから教えていただきました。生川さん、わずかな機会でしたが、大きな出会いをいただきました。ありがとうございます。
（２008年12月3日）
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